新撰組~変えてやる!!
葵は全身の痛みと疲労感に立ち上がれなかった。斉藤が隊士に葵の折れた刀を拾うように命令し、葵を肩に掴まらせ、立ち上がらせた。
「…葵、屯所に帰るぞ。歩けるか?」
葵は斉藤の体に体重を預け、立っているのがやっとだった。
「…一…?あぁ、来てくれたんだ。」
「…歩け…そうにないな。何ヶ所斬られた?」
葵は記憶を辿ったが、殺されないようにするのが精一杯で、覚えていなかった。
「……分からない。」
「そうか。急ごう。」
葵は斉藤の背中に乗せられた。戦っている最中は全く分からなかったのに、今は自分の血で染まった着物がやけに重く感じたのだった。
斉藤の背中で気を失った葵は、屯所の門前で待っていた永倉によって、山崎が居る部屋に連れて行かれた。
「葵っ!!…ほんま、用意しといて良かったわ…永倉はん、酒頼む。きっついの頼むで!!副長、葵が暴れんようにすんの手伝ってください!」
山崎はテキパキと指示を出し、葵を布団の上に乗せた。永倉が大急ぎで酒を持ってきた。山崎は永倉を外へ放り出し、葵の傷を診始めた。
「…縫わなあかんのはこの傷だけやな。副長、頼みましたよ。」
山崎は布を葵の口に押し込み、左手に酒を、右手に針を持った。
「……」
「…………」
この時代には麻酔薬がない。想像を絶する痛みは、気絶している者も目を覚ます程だと言う。口に布を押し込んだのは、舌を噛ませないためである。
「…始めんで。」
山崎も土方もゴクリと息を飲んだ。