新撰組~変えてやる!!

•2 折れた刀


 葵はあまりの痛みに目を覚ました。声にならない悲鳴が勝手に洩れる。葵は無意識に痛みから逃れようとしたが、誰かが押さえつけていて、暴れようにも、暴れられなかった。

 「副長、もっとしっかり押さえてください!手元がずれる!!」

 葵は痛みに耐えるため、近くにあった布を握り締めた。

 「葵!もう少しの辛抱や!!しっかりしぃや!」

 葵は何もせず、ただひたすら凄まじい痛みに耐えた。そして、その痛みがスッとなくなったと同時に、葵の意識は深い闇へと沈んでいった。







 「…葵、お疲れさん。」

 山崎は葵の脂汗の浮いて、髪が張り付いてしまっている額に触れた。山崎は、大量にある傷のひとつひとつに、丁寧に包帯を巻いていった。

 「…山崎、こんな時で悪いが間者を捜し出してくれ。こんなこと、二度と起こさないためにも、な。」

 「…承知致しました。その代わり……俺の代わりに、葵のこと、頼みます。目ぇ覚ましたら、そこにある痛み止めの薬飲ませてください。」

 山崎は静かに襖を開けた。冷たい風が山崎の頬を撫でていく。

 「…わかった。任せておけ。」

 「……………おおきに…」

 山崎は小さく呟き、少し明るくなり始めた空間へ、飛び出して行った。

 「…こんなに傷、作りやがって…しかも服までボロボロにして…とんでもねぇ馬鹿を、俺は拾っちまったんだな…」

 土方は葵の腕を包帯の上からさすった。痛みが走るのか声を上げた葵の声に、慌てて手を離した。

 「…早く起きろよ…まだ、やらなきゃならない執務が山積みなんだからな。遅れたら、お前のせいにしちまうぞ?だから…」

 土方はそこまで言って口をつぐんだ。

 
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