新撰組~変えてやる!!
「…でもさ~?葵がこんなに傷だらけになるなんて、不思議だよね~…。何があったの?斉藤さんが駆け付けた時には、もう敵はいなかったんでしょ?」
「ふへ?」
葵は三色団子を口に入れたまま首を傾げた。そして、それをゴクンと飲み込み、葵は改めて口を開いた。
「そうだね。全身が痛くてさ、支えられて立ってるのがやっとだったしね。あ~…あいつ、強かったなぁ…本当に殺されると思ったよ。」
葵はお茶に手を伸ばした。温かいお茶は土方好みの渋い味がした。
「名前とかは、…………聞いてる訳ー」
「それがさ、去り際に名乗ってくれたんだ。維新派の“玄鶴”だってさ。」
その名を口にした途端に、部屋の空気が張り詰めたものに変わった。
「…葵、そいつは確かに玄鶴って名乗ったんだな?」
「そうだよ。」
葵が答えると、その場の空気がさらに重々しいものになった。
「…土方さん…」
「あぁ…遂に出やがったな。」
葵がキョトンとした表情をすると、永倉と藤堂が驚いたように目を見開いた。
「知らねぇのか!?佐幕派の要人を必ず仕留めることで有名な奴だ。」
「通称、“闇夜の鶴”。使命を受ければどんな人も殺してきた奴だよ。本当に知らないの?」
葵は首を縦に振った。
「俺が狙われてたのか…?…確かに“さっさと仕事終わらせたい”みたいなこと、言ってたなぁ…けど、何でだろ?」
「…短期間でこんだけの出世してんだ。狙われない方が不思議だ。気は張ってたんだがな…。」
土方は奥歯をぎりっと噛み締めた。その悔しそうな表情が、何故か葵の心に引っ掛かっていた。