新撰組~変えてやる!!
「丞!?…って、どうしたの!?」
葵は顔が見えなくなる程の紙を持った山崎に驚き、呆然とその積み上がった紙を見つめた。
「…前は見えているのか?」
「斉藤はんは、これで見えると思っとるんか?」
その時、積み上がった紙の1枚がひらひらと落ちてきた。葵はその紙を地面に落ちる前に掴み、書いてある文字を読み取ろうとした。
「………報、告……書…?」
「ちょっ、今から副長に出しに行くんやから返してぇや。」
山崎は大量に積み上がった報告書を片手で器用に持ち、葵の手から1枚だけ落ちた報告書を抜き取った。
「すぐに召集が掛かると思うわ。葵を部屋に戻したいのは山々やけど、今回は目ぇ瞑るわ。斉藤はん、葵がこけたりせんようにちゃんと副長室まで連れて来てや。頼んだで!!」
山崎は副長室へと歩いていった。その背中を見て胸の辺りが痛んだ気がしたが、傷のせいなのか、そうでないのかは葵には分からなかった。
「葵、歩けるか?無理そうなら、また背負ってやってもいいが…」
「大丈夫。それに、今のうちから体は動かした方がいいから。」
葵は頭の中で“リハビリも兼ねて”と付け加えて、斉藤に笑顔を向けた。
「…そうか…ならば行くか。」
葵は大きく頷き、壁に少し体重を預けながら歩き出した。
「副長、遅くなりました。」
斉藤は開いた襖から顔を覗かせた土方に言った。壁に体重を預けていたとは言えまだ治りきっていない足の傷はズキズキと痛み、なかなか前に進めなかった。葵は斉藤に先に行くように言ったが、葵が怪我をした半分の理由は自分にあると思っていた斉藤は頑として動こうとしなかった。
「…小宮はどうした?」
「こっ、ここに…います。」
葵は土方の問いに息を整えながら答えた。
「…お前達で最後だな……とりあえず中へ入れ。」
葵と斉藤は言われた通り、中へと入った。