新撰組~変えてやる!!
“楠木は間者だったはず…でも、松永 主計<マツナガ カズエ>の名前がないのは何でだ?…とにかく、聞いたことがあった名前は…”
「…楠木 小十郎、御倉 伊勢武、荒木田 左馬之輔。」
葵に視線が集まった。
「…俺はこの3人は絶対間者だと思う。左之、荒木田を林と交代で見張って。一は御倉をお願い。それと一応だけど平助は松井ね。楠木は俺だ。あと、丞。そこには入ってなかったけど、松永 主計も調べて。いいですか、副長?」
「おぅ。それでいいんじゃないか?」
土方はニヤリと不敵に笑った。
「よし。じゃぁ、頼んだよ!」
葵の言葉に全員が困惑気味に返事をし、会議は終わった。
「おっと…小宮、お前は少し残れ。渡すものがある。」
葵は“待っておこうか?”と問い掛けてきた藤堂に、“先に行ってて。”と返し、再び土方の部屋に戻った。
「何ですか?石田散薬なら、まだ残っていますよ?」
「いや、そうじゃねぇ…頼まれてたのが届いたから、渡しておこうと思ってな。勝手に選んできた。」
土方はそう言って風呂敷を渡してきた。
「ぁ、新しい着物ですか?早いですね…ありがとうございます、副長♪」
「いや…用はそれだけだ。部屋に戻っていいぞ。」
葵は上機嫌に返事をしてから、壁に体重を預けつつ自室へと戻り、服を着替えた。
「さて、と…楠木を捜すか…」
そう呟いて屯所を出たところ、楠木はすぐに見付かった。壬生菜畑を、何が面白いのか、見つめ続ける楠木はしばらく見ていても全く葵に気付くことなく、身じろぎひとつしなかった。葵は、“人の気配にも気付かないのは、間者としてどうなんだ?”と頭の中で突っ込みを入れながら楠木にゆっくりと近付いた。
「何か、面白いものでもありますか?」
「そ、総隊長!?ぃ、何時からそこに!?」
葵は楠木の驚き様にクスッと小さく笑った。