新撰組~変えてやる!!
「…舞ちゃん、強いですね~…」
葵は茜色に染まった空を焦りながら見上げた。周りには楠木と舞以外誰もいない。
「…蒼兄はん…うち、帰るわ…これ以上兄はんらに迷惑掛けるん、嫌や。」
葵はホッとしたように表情を緩め、舞の手を握った。
「それじゃあ、送りますよ。帰りましょうか。」
舞は頷き、楠木に駆け寄って行った。そしてギュッと楠木の手を握った。
「楠木のお兄はんも一緒がええ。蒼兄はん、これくらいのわがまま、言うてもええやろ?」
「…ぅ……楠木、頼んでもいいか?」
葵は、意地でも離さないと更に手に力を入れた舞に困り果てた。
「もちろんですよ。舞さん、私達と帰りましょうね。」
「おおきに!」
舞は嬉しそうに笑った。
「楠木のお兄はん」
「舞さん、どうしましたか?」
舞は楠木と葵の2人に手を繋がれていた。
「…うち、大きぃなったら、楠木のお兄はんのお嫁になる!」
葵と楠木は驚きのあまり、舞の手を離してしまった。
「なっ、何を言うのですか!?いきなり!!親御さんが心配しますよ!?」
「大丈夫や。お父はんもお母はんも、うちの好いた相手と結ばれたらええって言うてるさかい!!」
楠木の顔が一瞬で赤くなった。
「はいはい、そこまでにしましょうね?舞ちゃん、大人はからかうものじゃありませんよ?」
「うちは本気や!!」
舞はダッと走って行き、声を張り上げて叫んだ。
「うちは!!本気やから~!」
舞が去った後も、葵と楠木はしばらくの間、その場から動けずにただ立ち尽くしていた。