新撰組~変えてやる!!
「副長、小宮です。」
「ぉ?…まぁ、いいか。入れ。」
珍しく躊躇した土方を不思議に思いながらも中に入ると、そこには山崎と土方が向かい合って座っていた。
「楠木と出掛けていたんじゃないのか?壬生寺に…総司も行ったはずだが?」
「2人はお菓子を買いに行ってしまいましたよ?で、俺は報告しなきゃいけないことがあったのに忘れていたので、それを伝えに…」
葵は辺りに人がいないのを確認して、襖を閉めた。
「昨晩、玄鶴に会いました。」
土方と山崎が驚いた表情になった。
「…屯所内に居たんですけどね。夜、いきなり現れて、壬生寺に連れていかれたんです。」
「何もされへんかったか!?」
葵は頷くこともできず、山崎の問いには答えずに言葉を紡いだ。
「…女だと、バレてました。言いふらしたりはしないそうですけど……。…それから、“新撰組に紛れ込んでいる間者は5人”だと言い残して去っていきました。…すいません。刀がなかったもので、みすみす逃がしてしまいました。」
「……そうか…。怪我は無いんだな?」
葵は土方の問いに頷いた。
「…刀…明日にでも、買いに行くか。」
「そうですね。刀が無いと、見回りにも行けませんからね。」
「よし、斉藤には俺から伝えておく。」
「ありがとうございます。」
淡々と成される会話が、何故かいつもよりもたどたどしく感じる。
「……用件はそれだけです。失礼しました。」
葵はいつもと違う雰囲気に耐えられなくなり、礼をすることも忘れ、そのまま土方の部屋を飛び出した。