新撰組~変えてやる!!
「…おぉ、葵…帰ってきたんか。もうすぐ刀、買いに行くんか?」
屯所に帰ってくるなり、葵は絶句した。葵に話し掛けているこの男は現在、葵の部屋に居座っていた。
「…丞…、自分の部屋に帰れ!!ここは俺の部屋だ!」
葵は山崎をつまみ出すため、着物の襟を掴んだ。
「まぁ、待ちぃや。今から出掛けんねんやったら、帰る頃には雨に降られんで?やから、これ、貸すわ。」
どこから出したのか、はたまた初めから持っていたのか、山崎の手には傘が握られていた。当たり前ではあるが、ビニール傘ではなく“からかさ”のようなもの。
「…ありがと…」
「そんだけやから。じゃ、ええ刀見つけてきぃや~!!」
山崎は葵の手に傘を押し付けて出て行った。やっぱり、この時代の傘は自分の想像よりも重たかった。
「一、準備出来た?」
「…あぁ……副長の所には、もう行ったのか?」
斉藤は、長い髪をいつもより下の健康骨辺りで括っていた。元々整っている顔立ちをしていて、あまり羽目を外さない斉藤が少しでもラフな格好をすると、女達がこれでもかというほど集まるだろう。それほどまでに、目の前の斉藤は妙な色気を放っていた。
「…?どうかしたか?」
「…いーや、何でもないよ。」
葵は、斉藤のあまりの無自覚さに心配になり、内心小さく溜め息をついた。
「なら、副長の部屋に寄って行こう。」
「うん。」
葵は仕事におわれているであろう、土方と山南の姿を想像し、クスッと笑った。
「…失礼する、総長、副長………どうした、葵?」
葵は斉藤が開けた襖の向こうに、想像通りの構図があり、吹き出しそうになるのを必死にこらえていた。