新撰組~変えてやる!!

 土方は葵を連れて、町へと出ていた。正式に入隊することになった、葵の生活必需品を買うためだ。

 「ひ、土方さん…。速いです…。」

 何の会話もなく歩いていたが、葵が土方に話し掛けた。

 「………。」

 それに対して、土方は言葉を返さずに歩き続けた。再び、2人の間に沈黙が続いた。それから数分後、土方はある一軒の店の前で止まった。

 「……入るぞ。」

 土方はそのまま店の中へと入ってしまい、葵は店に戸惑いながらも入っていった。

 「いらっしゃい!まぁ、土方さんやないどすか。お越しやす。」

 「あぁ……。」

 店の中では、土方と店番をしている女性が、会話していた。

 「あの……土方さん?」

 葵は土方に声を掛けた。土方と会話していた女性の視線が、葵へと注がれた。

 「あぁ……。ぉい、お露。今日はこいつの着物を買いに来たんだ。わりぃが、見立ててやってくれ。」

 「はい。」

 お露<ツユ>と呼ばれた女性は、店の奥へと入っていった。そして、戻って来た時には手に7着程着物を持っていた。その中から5着を土方が選び、さらに袴を5着、羽織りを3着買った。そして、お露に“また今度、来る。”と言い残し店を出た。

 そんな調子で、結い緒を3本買うためにあっちへ。晒しを買うためにこっちへ。また、刀を買うためにあっちへとふらふらになる程に歩いた。そんな葵を気遣ってか、今まで買った荷物の全てを、土方が持っている。そんな買い物も終わったようで、今は屯所への帰路についていた。目の前に屯所が見え始めた頃に土方は、葵に話し掛けた。

 「おい、お前……」

 葵は、顔だけ土方の方に向けた。

 「……芹沢には、近付くなよ。」

 葵は、土方の言葉に頷いた。鬼副長の小さな、小さな優しさを2つ、垣間見た葵だった。

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