新撰組~変えてやる!!
•2 刀
葵はいつも通り、居心地の悪い町中をその居心地の悪さの元凶であると思われる人物達の少し後ろを歩いていた。そして大きな溜め息をついた。
「新撰組には美形が多過ぎる。あの幹部達の徹底した美形ぶり…絶対におかしいよな…現代だったら、凄い人気だろうし…。今だって、町の人々に嫌われてるにしては女性達の視線が多いよね…」
葵は独り言を小さく呟き、再び大きな溜め息をついた。
「あっれ~…?小宮じゃないか…何、こんな所うろついてんだ?」
「え?」
名前を呼ばれ、振り返ると、そこには少し身だしなみを整えた雫がいた。
「雫さん!お久しぶりです。お梅さんは元気にしていますか?」
「もちろん!なんたって、アタイが面倒見てんだよ?仕事も順調だしな。…で、小宮はどこかに出掛けるのか?」
相変わらず人当たりのいい笑顔に安心し、葵も微笑んだ。
「ええ…。この間、今まで使っていた刀が折れてしまったので、代わりの刀を買いに…」
「そうか…。…そうだ、今度…明日か明後日になるかな…。飾り紐でも届けてやるよ。おっと、急いでたんだった。お得意先を待たせちゃ悪いし、もう行くよ。じゃあな、小宮!!」
雫はその場から急ぎ足で去って行った。葵もだいぶ離れてしまった土方達との距離を縮めるべく、走ったのだった。
「…どうだ?気に入ったのはあるか?」
葵は目の前に置かれた刀を1本手に取り、少しだけ刀身が見えるように抜いた。が、すぐにまた鞘に納め、あった場所に置いた。そして、次の刀に手を伸ばした。
「…もう少し長い方が、いいかなぁ…」
葵は再び次の刀に手を伸ばした。店はすでに3軒目になっていた。
「…これは重さが微妙。」
葵は斉藤が選んだ刀を全て見終え、小さく首を横に振った。
「…そうか。それじゃあ、これはなおしてくる。」
斉藤が刀を元々あった場所へとなおしていく。葵はなんとなく店をキョロキョロと見渡した。そして店の隅に立てかけるようにして置いている刀を見つけ、それを手に取った。
「…彫刻?」
葵が手にした刀の漆塗りの鞘には細やかな彫刻がしてあった。葵はそれに惹かれるように刀身を抜いた。通常の刀よりも黒い刀身に葵は見入った。