新撰組~変えてやる!!
•3 日々
その日は、良く晴れた日だった。いつもは大人の男でさえも近寄らない屯所に、その日は不思議な訪問者が多かった。
「……何もすることがないと、暇だなぁ…」
普段、非番が少ない幹部達にとって、それは嬉しいものだが、その日の葵は違った。楠木の死を目の前で見たためか、はたまた新しい刀を買ったためなのかは分からないが、最近の葵はよく眠れずにいた。現在、非番の葵は日当たりのいい縁側で寛いでいた。
「おっ…葵、今日は非番か?…そういや最近、働き詰めだったな…。」
「あれ、ぱっつぁんだ…」
稽古に行く途中だったのか木刀を持った永倉がふと足をとめた。
「ぱっつぁん、暇だ~…これから稽古でもつけに行くのか?」
「あ~…まぁな。そだ、暇なら俺と試合しようぜ!」
葵も名案だと思い、立ち上がった。強い人と戦うのが楽しい。新撰組幹部の共通点のうちの1つだ。
「やった!暇つぶしができる!!それに俺、ぱっつぁんとは一回ちゃんと試合したかったんだ!」
「決まりだな。って、刀は置いていった方がいいんじゃねぇか?」
葵は一度腰に差した刀に目を向け、再び永倉に視線を戻した。
「…俺さ、実戦に慣れてないからさ、できるだけ早く慣れたいんだ。だから、刀は差しておきたいんだ。重さに慣れておきたいし…駄目、かな?」
「いや、葵がそれでいいなら俺は構わねぇよ。」
そう言ってニカッと笑った永倉に葵も“ありがとう”という言葉と共に笑い返した。
「いくぜ、葵!手加減なしだ!!」
「そんなこと言って…怪我しても、責任は取らないからね!」
葵は木刀を構え、不敵に笑った。それを合図にしたように、それぞれの纏う空気が変わる。壁際に寄った平隊士達が固唾を呑んで見守る中、動いたのは葵だった。
「…っ!!…へぇ~…予想以上にできるんだね、ぱっつぁん…」
「…あんま…舐めんじゃ、ねぇ…」
正面から、全体重を掛けて振りかざしたはずの葵の木刀は、永倉の木刀によって受け止められていた。
「へへっ!そうこなくっちゃ!!」
葵は楽しくて仕方がないとでもいうようにぴょんっとごく軽く後ろへ飛び、間合いをとった。