新撰組~変えてやる!!

 「…来年の夏に、大きな事件が起こります。これは新撰組の名を全国に轟かせる切っ掛けとなった事件と言われています。長州の企みを阻止した事件です…」

 葵は頭に疑問符を浮かべる3人を一度見やり、“詳しいことを話すのはやめよう”と思った。

 「その事件の日は、体調不良の隊士が多くて、会津に援軍を頼んだほどです。しかし、会津に頼んだはずの援軍は来ず、少ない人数をさらに2つに分けて捜索したり討ち入ったと伝わっています。最初に切り込んだ人数は僅か5人でした。」

 わからないなりに理解したらしい土方が顔を青ざめさせて、葵を見た。

 「…だから、討ち入りの練習をしておいた方がいいと…?少しでも慣れるべきだということか…?」

 「ええ。理解していただけましたか?」

 土方は青ざめたまま頷いた。それを確認し、葵は襖へと歩いていく。

 「では、もう行きますよ。俺はもう寝ますから。後は3人で進めてください。」

 「ちょっと待て。寝るって、今からか?こんな中途半端な時刻にか?」

 葵は睨むように目を細め、振り返った。

 「…俺の時間をどう使おうと、俺の勝手です。安心してください。夕食は要りませんから…。」

 葵はそのまま部屋に戻り、布団にくるまった。そしてその日の翌日、葵がすっきりした表情で朝食を食べに行ったのは、言うまでもないだろう。






 「では、討ち入り練習の組分けを発表する。討ち入り側の者は隊服を着ること。」

 広間に土方の声が掛かる。その声に隊士がしんと静かになる。

 「討ち入り側、2番隊、3番隊、6番隊、10番隊、それと俺と小宮だ。」

 “おう”と男らしい隊士の声が上がり、その声の大きさに葵は思わず耳を塞いだ。

 「残りは屯所を守れ。なお、使うのは木刀。致命傷となる場所に刀を当てられた場合、その者は失格とし、その場に倒れておけ。」

 再び隊士が口を開いたのを目ざとく見つけ、葵は耳を塞いだ。そして、今度は手の平ごしに隊士達の声を聞いた。

 「それから、最後まで立っていられた10人は3日間非番にしてやる。以上だ!」

 最後の土方の言葉に隊士達から歓声が上がった。葵はその声から逃げるように自室へと戻り、隊服を手に取った。

 
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