新撰組~変えてやる!!
•5 京見物
「朝やで~!葵~、はよ起き!!」
そんな大声と共に勢い良く開けられた部屋の襖。葵が差し込んだ眩しいくらいの光にうっすらと目を開けると、そこには満面の笑みを浮かべた山崎の姿があった。
「…まだ眠い…」
「出掛ける約束したやろ?ほら、さっさと起きぃや~!」
山崎は部屋にズカズカと入り込み、葵の布団を引っ張った。
「もぅ…分かったよ。起きる。」
「よっしゃ!着替えんで!」
寝起きがいいのは、こういう時に都合がいい。それにしても…。
「…今から着替えんの?朝ご飯は?」
「そんなん、後や!葵なら、着替えてからでも食べられる!」
手際の良さ過ぎる山崎。もう着付けが終わってしまった。流石に早すぎて不安になる。
「…丞…、これ歩いてる間にほどけたりしない、よね?」
「…俺の腕を疑っとるんか?」
少し声のトーンが下がった山崎に葵は慌てて否定した。座らせられて、髪をとかれる。あっという間に髪を結い上げた山崎。早くてきれいに仕上がるのは、山崎の腕がいいからなのだろうか?
「…すごいね、丞は……」
山崎は葵の正面に回り、葵の目を閉じさせた。パタパタと顔全体に何かを塗られる感覚がして、その次に目の周りに何かを塗られた。今でいうアイシャドウのようなものだと思う。続いて、唇に筆で紅がひかれる。目を開き、鏡を見れば別人になったような自分の姿。
「…すごい…別人みたい…」
女性らしい容姿になった自分に心底驚いた。これだけのことでこんなに変わるものなのだろうか?
「さ、朝食食べに行くで~?」
ハイテンションな山崎に手を引かれ、広間に入ると、皆の動きが止まった。
「…山崎、その女…山崎のいいやつか?なぁ、そうなのか?」
いち早く正気に戻った永倉が山崎を冷やかす。
「……違ー」
「そうや。俺の女や…」
否定しようとした葵の言葉を遮り、山崎が言葉を紡ぐ。冷やかした張本人である永倉がいちばん驚き、目を見開いて固まってしまった。