新撰組~変えてやる!!
「ねぇ…丞、どこまで行くの?」
「後少しや…」
この会話も何回も繰り返している。葵は小さく溜め息をついた。
「…疲れたか?」
「まぁ…着慣れてないものだしね…」
女物の着物は、見ている分には綺麗だと思うが、こうして着ると重たいし動きづらいものだ。
「もう少ししたら休憩しよか…」
今は町外れを歩いているため、なかなか店もない。しばらく歩き、山崎はある店に入って行った。
「おばちゃ~ん…席空いとる~?」
「はい、はい…。あら、幸ちゃんやないの…久し振りやねぇ…」
葵は首を傾げた。どこかで聞いたことがあると思ったのだ。そしてその答えはすぐに出てきた。
「あら、その子…幸ちゃんのええ人?えらい可愛らしい子やねぇ…ぁ、奥の席どうぞ。」
「おおきに、おばちゃん!」
山崎は葵の手を引いて奥の席に向かっていく。葵はその横に行き、小声で尋ねた。
「ね…何で“幸人”つかってんの?」
“幸人”は山崎の偽名だ。それに店の女性ともずいぶんと親しい仲の様に見えた。
「だいぶ前に、少し世話になったんや。俺が組に入る前に。」
「ふぅん…」
葵は席に座り、お茶が運ばれてくるまでじっと山崎の顔を眺めた。
「幸ちゃん…いつものでええね?」
「おぅ。頼んだで~…」
「ほな、ごゆっくり…」
店の人はお茶を置いてすぐに行ってしまった。
「すす…幸人?…いつものって?」
「普通に定食や…」
山崎はニコニコ笑いながら言った。