新撰組~変えてやる!!
•5 小姓と隊士
「芹沢局長!おはようございます!!」
朝、平隊士と藤堂が部屋の前を通ったとき声をかけた葵は、そのまま藤堂と共に食事をするために広間へ来ていた。
「あぁ…今日は町へ出るぞ。」
「はい!…新見副長、オハヨウゴザイマス。」
葵は芹沢と挨拶を交わした後、新見にわざとらしく平坦な声で挨拶をした。その行動に苛立ったのか、新見が睨み付ける。が、葵はそれを無視して、土方の元へ向かった。
「おはようございます。土方副長、近藤局長。」
「あぁ…」
「おはよう!小宮君!!」
土方は、短く返事をした。近藤は、初めて会ったときのように愛嬌のある笑みを浮かべながら、挨拶を返してくれた。
「土方副長、芹沢局長は今日、町へ出るそうです。俺もお供してきます。」
「あぁ…わかった。」
「それともうひとつ!…俺は、どこに座ればいいですか?」
土方は、平隊士が集まっているところを指差した。よく見れば端に空いている席がひとつあった。葵は土方と近藤に一礼してそこへ向かった。
「あの…ここ空いてますか?」
葵は空いていた席の隣に座っている無口そうな男に声を掛けた。やはりその男は何も話さず、ただこくんと頷いた。葵は、“失礼します。”と声を掛けて隣の席に座った。
昼、芹沢一派に付き添い、葵は町へ来ていた。慣れない刀を腰に差し、昨日土方と出掛けて買った男物の着物と袴、結い緒を身に着け芹沢達の後ろを歩いていた。葵はただ、見ているだけだった。先頭を歩いていた新見が一軒の店に入っていき、芹沢や葵もそれに続き入った。店の中には、着物がある。ここは呉服屋のようだ。よく見れば、昨日土方と来たところだった。
「いらっしゃい。」
お露が奥から出てきた。お露も葵に気付いたようで、ニコッと笑い掛けてきた。
「おい、店主をだせ。」
新見が言った。お露は少し頭を下げると再び店の奥へと戻っていった。暫くして、お露が店主を連れて戻ってきた。
「へ、へぇ…お呼びでしょうか…?」
お露と違い、店主は怯えているように見えた。実際に声が震えていた。
「あぁ…新撰組に金を出せ。」
「へえ!しょ、承知しました。」
店主は急いで店の奥へと戻っていった。