新撰組~変えてやる!!
お露は急いで店の奥に戻っていった店主に苦笑いし、葵は申し訳なさそうに苦笑いした。
「も、持ってきました…。」
店主は震える声で言い、震える手で包みに入った金を新見に渡した。
「御苦労。これからも、協力を頼んだ。」
そう言ったのは、新見ではなく芹沢。店主は慌てて頭を下げた。新見はそれを見て、フンッと鼻を鳴らして芹沢と共に出て行った。一派もそれに続き、葵も店主とお露に礼をして店を出た。それから何軒かの店を回り、大分お金がたまったのを確認した芹沢は“解散だ。”とだけ言い残し、新見と共に屯所へと戻っていった。他の3人もそこで、散り散りになっていった。
“あ……原田さんだ……”
行く当てもなく、同じ道を行ったり来たりしていた葵の目に映ったのは隊服に身を包んだ原田の姿だった。巡回している途中なのか、後ろには3人程、原田と同じように隊服に身を包んだ平隊士がいる。その姿を見て思い出したのは土方の言葉だった。葵は、土方に命じられたことを実行するために屯所へと戻って行った。
「土方さん…小宮 葵、只今戻りました。」
「あぁ…入れ。」
葵は、土方の部屋に入った。土方は仕事に追われているようで文机の上には書類らしきものが大量に乗っていた。
「言われたとおり、報告に来ました。」
「あぁ…」
土方は葵が入って来た時の背を向けた姿勢のまま、返事をした。葵は、土方から離れたところに座り、報告を始めた。
「土方副長、今日回った店は6軒です。殴るなどの暴力も、芹沢局長はしていませんでした。主に仕切っていたのは、新見副長です。真っ先に交渉に入るのは、どの店でも新見副長からでした。芹沢局長が喋ったのは3回ほどでした。」
「わかった。好きにしろ。」
土方は、葵が話し終えたのを見計らって言った。しかし、葵が立ち上がる気配はない。土方が不審に思い見てみると、葵はジッと土方の顔を見ていた。