新撰組~変えてやる!!
「…好きにしてもいいのでしたら、もう少しお話を…。よろしいですか?」
葵は、土方の目をジッと―まるで、断ることは許さないとでも言うように見ていた。土方は短く返事をして、再び文机の書類に目を通しだした。葵は、内心溜息をつきながらその背に話し始めた。
「……土方副長、あなたが本当に手を焼いているのは新見副長なのではありませんか?」
土方の肩がピクリと揺れた。葵はそれを見て確信した。“問題は、やはり新見だったか。”と。
「私が感じたこと、全てお話しします。…芹沢局長は、新撰組の中で一番この組の事を想っています。酒を飲んでいる時も、そうでない時も。この組の為に良かれと思ってやっていることが、新見副長の為に印象の悪いものとなっている。本当に、行動を知りたい人は、芹沢局長ではなく、新見副長ですね?」
「………………………。」
土方は何も話さずに固まっていた。葵はそれを見て溜息をつき、部屋を出るために立ち上がった。
「…誰の行動を報告させるか、決まったら教えてください。」
葵はそれだけ言って、土方の部屋を後にした。葵は借りている客間へと足を運んでいた。丁度、角を曲がった時に誰かにぶつかった。
「てて…。すいません…怪我はありませんか?」
葵は、ぶつかった反動で尻もちをつきながらも謝った。すると、相手が手を差し伸べてきた。驚いて顔をあげると、困ったように笑う藤堂がいた。
「小宮こそ…大丈夫か?」
「はい。すいませんでした。」
葵は藤堂に手を貸してもらい、立ち上がった。
「小宮、今暇か?」
「まぁ、はい。」
藤堂は、嬉しそうに笑った。
「なら、甘味処へ行かないかな?」
「……ぇ?でも…」
藤堂はにっこりと笑い、困惑する葵にそう言った。
「それとも、僕と行くのが嫌?」
葵よりも少しだけ身長の低い藤堂は、上目遣いで葵を見た。そのまま、“僕が奢るからさ…”と続けて言ってきた。
“ぅ……か、かわいい!”
それでも、葵の中にある理性が“遠慮すべきだ”と警告音を発していた。