新撰組~変えてやる!!
「ふ、副長助勤の方に奢っていただくなど、恐れ多い。」
葵は藤堂の目を見ないように、うつむきながら言った。
「ならさ、今ぶつかっちゃったお詫びさせて?」
葵が、“けど……”と言葉を発すると、藤堂は続けるように言った。
「……それに、実を言うとさ、男1人で甘味処に行くの、恥ずかしいんだ。」
そこまで言われ、葵は首を縦に振った。
藤堂と葵は、町に出てきていた。若干、幼さを残る整った顔の藤堂と、中性的な顔立ちに、大きめで強い光を宿した目をしている葵。そんな2人が並んで歩いているのだから、娘達が注目しないわけがない。土方と共に歩いたときにも感じた娘達の視線に、葵は首をすくめた。そんな様子の葵を見てからからと笑う藤堂は、慣れっこなのか気にもしていないようだった。
「小宮ってさ、綺麗な髪してるよなぁ……。」
「そうですか?」
甘味処に来て、一番始めに出た言葉がそれだった。葵は照れたように、はにかんだ。髪を誉められて、気分が悪くなる女性は殆どいないだろう。葵も、例外ではなかったようだ。
「そう言う藤堂さんも、綺麗な髪ですよ?」
葵は、高く結われた見事な黒髪を羨ましそうに見つめた。
「藤堂さん、モテるでしょー?」
「えっ!?そんなことは……」
葵は少しだけ、藤堂をからかった。しどろもどろになった藤堂ににっこりと笑い、さらに問い詰めると、顔を赤くして黙り込んでしまった。“さすがにやり過ぎたかな”と、思った葵は、素直に藤堂に謝った。
「すいません…。」
藤堂は小さな声で、“いえ。”と言ったきり、話さなくなった。暫く、気まずい雰囲気が流れていたが、店員が団子を持ってきたことで、その雰囲気はなくなった。
「団子、2人分お待ち遠様。ごゆっくり、どうぞ。」
「ありがとう。」
店員の娘は、ニコッと笑い、礼を言った藤堂に照れ隠しに笑い、去っていった。
「ほら、食べようよ♪」
藤堂が、1つの皿を葵に押し出すようにして渡した。葵と藤堂は、皿に乗っている団子を一本手に取り、口に入れた。