新撰組~変えてやる!!
「よしっ!決めた。俺も、葵って呼んでいいか?俺のことは“ぱっつぁん”とでも呼んでくれればいい。敬語もいらない。」
永倉は葵の前に来て、そう言った。
「ぁ…、はい!もちろんです!!」
「クッ…、敬語はいらねぇって。なっ、葵?」
葵は照れたように笑った。また1人“葵”と呼んでくれる人が増えた。
「ありがとう!ぱっつぁん!!」
嬉しいことが重なったこともあって、葵は気づけば永倉に抱きついていた。
「おいおい…。俺には、衆道<シュドウ>の気はねぇぞ?」
「なっ!俺にだってない!ただ、葵って呼んでくれる人が、今まで家族以外いなかったから、嬉しかったんだ。本当に、いきなり抱きついたのは悪いと思うけど。」
葵は言い訳をして、永倉から離れた。
「なら、左之助のことさ、も俺らみてぇに“左之”って呼ぶか?左之もいいだろ?」
永倉は、原田に確認するように言った。原田はそれに、満面の笑みで応えた。
「もちろんだ!よろしくなっ、葵!」
葵も原田の笑顔につられて、微笑んだ。
「こっちこそ。よろしく、左之!」
原田や永倉、藤堂と共に屯所に戻った葵は、原田と永倉が巡察の報告を土方にしに行くと言うので、藤堂と別れ2人についていった。本来ならば沖田に教えてもらうべきだが、ついでに聞いておけばいいかと思い直した。
「土方さん、入るぜ?」
「あぁ…」
永倉がある一室の前で声をかけると、中から無愛想な声が返ってくる。その声が聞こえたのを確認して、原田と永倉が部屋へと入った。
「ん?入んねぇのか、葵?」
原田が、なかなか入ろうとしない葵に声をかけた。
「え?入ってもいいの?」
「そのつもりで来たんだろ?まぁ、今日は報告することなんてねぇけどな。」
原田がニッと笑った。
「じゃぁ、失礼して…。」
葵は中に入り、永倉と原田の後ろに座った。
「俺の方は異常なしだぜ、土方さん。」
「俺もだぜ。」
永倉が報告し、それに続いて原田が報告する。2人の報告を聞いた土方が“ご苦労”とだけ言った。そのまま、動かない葵達を不思議に思ったのか土方が振り向いた。