新撰組~変えてやる!!
「どうした?まだなんかあんのか?」
土方は、怪訝そうな顔をして葵達に問いかけた。
「あの~…」
口を開いたのは葵。部屋に居る者の視線が全て葵に向いた。
「えっと…、昨日は急な入隊だったこともあって客間で寝ましたが、今日からはそういうわけにはいきませんよね…。やっぱり、隊士の皆さんと寝なければいけませんか?」
土方は大きな溜息をついた。
「てめぇには悪ぃが、長州のものであるという疑いが晴れるまでは幹部の者達と一緒に寝てもらおうかと思ってんだが…―」
「左之と沖田さんと副長と同じ部屋だけは、嫌です。」
葵は土方の言葉を遮り、そう言った。その直後に永倉が大笑いし、原田が抗議の声をあげ、土方のこめかみ辺りがピクリと動いたのは言うまでもない。
「左之、ぱっつぁん、席をはずしてくれ。」
土方は怒りを抑えるように大きく息を吐き出してから言った。これから土方の説教タイムが始まると予想した永倉と原田は、一目散に部屋から飛び出していった。葵は2人が開け放していった戸を閉め、土方の前に座り天井を見上げた。
「そこに居るんでしょ?監察方の…山崎 丞、さん…かな?」
葵は天井を見据えたまま、言った。その言葉に土方の目が少し見開いたと同時に、天井から音もなく何かが降ってきた。
「なんや、気付かれとったんかいな。油断のならん嬢ちゃんやな。」
葵は、上から降ってきた男に驚いた。
「…朝、隣に座ってた無口男…。」
そう、葵の目の前に降りてきた男は、朝食の時に一言も喋らなかった男だった。
「なんやそれ…。俺には、ちゃ~んと山崎 丞ゆう名前があるんやから、名前で呼んでぇや。ところで、嬢ちゃん、いつから気付いとったん?」
「むっ…。それを言うなら、“嬢ちゃん”て呼んでるあなたも同類ですよ、山崎 丞さん。ちなみに、気付いたのは昨日寝るとき。」
山崎はわざとらしく、やってしまったとでもいうように頭を押さえた。
「あん時か。ほんま油断ならんわ…。」
「おい、山崎…」
通常よりも低い土方の声に、山崎は焦り始めた。