新撰組~変えてやる!!
「ちょ、副長!気は抜いてへんかったんやで?葵の勘がよすぎるんや。それに、長州の線は薄いやん!なんで俺に見張らせんのや!」
「ぇ?」
今度は葵が目を見開いた。それに構わず山崎は話し続けた。
「ついでに報告もすると、葵の情報はどんだけ探っても、昨日永倉はんに担がれて屯所に来るまでのわずかな情報だけや。長州の線は薄すぎる。」
「そうか…。なら、余計に監視は必要だな…。」
葵と山崎は土方の言葉に目を見開いた。
「こいつほどの実力、長州に渡れば色々な意味で悪用されやすい。未来のことも、剣の腕も。…、俺と総司と左之以外なら、誰と同じ部屋でもいいんだな?」
葵はわけがわからないままうなずいた。それに山崎が、焦りだした。
「副長、まさか…!?」
「よし、小宮、山崎と相部屋にする。副長命令だ。いいな?」
山崎はやっぱりとでもいうように肩を落とした。葵は茫然と座っていた。まさか、山崎と相部屋になるのは予想していなかった。なるのであれば、年の近い藤堂か、土方が信頼を置いてある斎藤だろうと踏んでいたからだ。葵が茫然としている間にも、時間は無常にもにも過ぎていく。気付けば、昨日寝た部屋に置いていた荷物が、土方の部屋に運び込まれていた。そして、強制的に立たされ、ある部屋に入れられた。
「葵?しっかりしぃや?」
山崎に呼ばれ、葵はハッとした。それを確認した山崎が、安心したように前に座った。
「よし、改めて自己紹介すんで?俺は山崎 丞、監察方や。葵の事は副長から聞いてるさかい安心し!」
山崎 丞<ヤマザキ ススム>。大阪の針医者の息子。新撰組のお抱え医師ともいえる存在。
「今はまだ、一般隊士の、林 幸人<ハヤシ ユキト>としておるさかい、“幸人”とでも呼んどき?監察方はまだないから、迂闊に名前出したらあかんで?」
「了解です、幸人さん。」
「敬語はいらん。もっと気軽に接してくれたらええ。」
山崎は、ニッと笑った。
「じゃぁ幸人、なんでここは女物の着物があるの?やっぱり、仕事上女装しなきゃいけないことがあるから?」