新撰組~変えてやる!!
「ぇ?…すごい……あんなにいたのに…何が起こったのですか?」
その方向を見た楠木は、驚きに目を見開いた。続いて、沖田、安藤も驚きに唖然となる。
「俺は、一睨みしただけですよ。他には何もしていません。」
葵は、事も無げに言ってのけた。そのことに、3人の目がさらに見開いた。
「そうでしたか。本当に、ありがとうございます。」
楠木は、ぺこっと頭を下げてから、ニコッと微笑んだ。楠には“かっこいい”とか“かわいい”という表現よりも、“きれい”という表現の方があっていると思った。
「さあ、見回りを続けましょう!沖田さん。」
「そうですね!」
その後、何の事件もなく見回りを終え、屯所へと戻った。
夜。夕食を終えた葵は、縁側に座り月を見ていた。この時代は、余計な明かりがないため、星も月もはっきりと見える。
「きれいだなぁ~…」
ふと呟いた言葉は、驚く程に悲しい響きをしていた。そして、兄のことを思うと泣きそうになる。
“向こうは、どうなってるのかな…。自分はもう、死んでいるのかもしれないな…。叶兄さん……榊兄さん……”
「…あいたいよ……」
思わず呟いた言葉に、ハッとして辺りを見回した。周りに誰もいないことを確認してから、葵は部屋に入った。部屋の中には、布団が1つだけ敷いてある。葵は、布団に潜り込み、目を堅く閉じた。しばらくしてから聞こえてきたのは、安らかな寝息の音だけだった。
翌朝、葵は小さな物音で目覚めた。外はまだ暗い。葵は薄く目を開いた。
「ん?起こしてもぅたか…悪いな…」
聞こえてきた声に、葵は目をぱっちりと開いた。
「…丞?丞っ!!お帰り!」
葵は布団から、飛び起きた。
「まだ寝ててもええんやで?ほれ、横になり。ほれ!」
山崎は葵を押し倒すように、肩を押した。山崎はすでに着流しに着替えていた。
「ううん…もう起きるよ。丞こそ寝なよ。目の下に隈が出来てる。徹夜だったのか?」
「嘘や!!まだ2日間も経ってないんやで!?」
山崎は、目の下をごしごしとこすった。
「ほら、ここ貸すから寝な?」
葵は布団から起き上がり、山崎をそこへと寝かせた。