新撰組~変えてやる!!
暫くの間、息も乱さず打ち合っていた葵と斉藤だったが、その2人もさすがに息が乱れてきた。
「…ッ…ハァ……そろそろ、片を付けませんか?……斉藤、さん!!……」
葵は乱れた息を整えながら、斉藤に話し掛けた。斉藤もコクンと小さく頷き、口を開いた。
「…フゥ……同感、だな……これで、終わらせると……するか………」
葵はニッと不敵に笑い、構えた。斉藤も少しだけ、口角を上げた。
それは、一瞬のことだった。交わるかと思われた2本の木刀は、交わることもなかった。1つは何もない空間を切り、もう1つは見事、相手の胴に入った。
「……グッ………」
「………胴あり、です。」
打たれた所を押さえ、床に膝をついたのは斉藤だった。
「……俺の完敗だ。」
斉藤は、ゴロンと床に寝そべった。葵もその隣に腰を下ろした。2人の息はまだ少し乱れたまま。
「…いえ。斉藤さんの踏み込みがもう少し深ければ、俺は負けてましたよ。けれど、約束は約束ですので1つ。」
「あぁ……」
斉藤は、葵に目を移した。
「斉藤さん。俺のことは、葵と呼んでください。」
斉藤の目が大きく見開かれた。
「し、しかし…小宮……」
「“葵”です!」
葵は、有無を言わさないとでもいうような勢いで、斉藤に言った。
「で、では…葵……。俺のことは“一”でいい。俺だけが呼び捨てにするのも、気が引けるからな…。」
「ハジメ?いいの?」
斉藤は、口元に小さな笑みを浮かべた。それを、肯定の笑みと受け取った葵はにっこりと笑った。
「………葵…斉藤……飯の時間だぜ?」
葵と斉藤は、いきなりの第三者の声に道場の入り口を見た。そこには、よく見知った顔があった。
「…左之!!おはよう!」
「おう!!2人とも、飯だ。飯!」
葵は立ち上がり、斉藤を見た。斉藤は苦笑いしながらも立ち上がった。