新撰組~変えてやる!!
「ありがと~、葵♪」
お梅はぎゅっと葵の手を握った。葵は、ふんわりと笑った。葵がどうすればいいか分からない時にする癖、それが、“作り笑顔”であった。両親が幼い頃に亡くなったこともあって、葵と榊、叶は親戚の元をたらい回しにされた。その時に覚えたのが“作り笑顔”だった。完璧に微笑むその葵が、作り笑いをしていると気付いた人はいない。
「で、では、俺は失礼します。」
葵はその場から、一刻も早く立ち去ろうとお茶を1つお盆に乗せて部屋を出ようとした。
「おい、小宮。どこへ行くのだ?その茶は、誰の物だ?お前のじゃないのか?」
「えっと…これは、土方副長のです。」
芹沢に問われ、咄嗟に出た名、それは“土方 歳三”だった。芹沢は、それが咄嗟に出た言葉であるとは気付かずに、“うむ…、そうか…。”と言い、葵を送り出した。
「あの~…土方副長、入っていいですか?」
「ぁあ!?…どうした?……入れ。」
葵は、土方が“入れ”と言ったのを確認してから土方の部屋へ入った。
「えっと…お茶を持ってきました。」
そう言って、葵は土方の側へと寄った。やはり土方の文机の上には、大量の書類が乗っている。
「あぁ…そこに置いておけ。」
葵は、土方が示した場所に、湯呑みを置いた。
「ひっじかったさ~ん♪」
元気な声が聞こえたと思ったと同時に、土方の部屋の襖が開いた。
「総司!!何度言えば分かる!?いきなり開けんじゃねぇ!」
「え~…いいじゃありませんか…。」
現れたのは、沖田だった。沖田は、プクッと頬を膨らませた。土方はただ、溜め息をつき続けていた。
「沖田さん…、こんにちは。」
「小宮さん、居たのですか?」
沖田は、初めて気付いたとでも言うように葵を見詰めた。