新撰組~変えてやる!!
「そうか…ん?おい、小宮。その手、どうした。」
土方に言われて、葵はハッと左手の甲を押さえた。まだ、血が出たままだった。
「葵…見してみ?」
葵は山崎から一歩下がった。山崎が一歩詰め寄れば、葵も一歩下がる。そのやり取りが何回も続いた。
「…ぅあ!!は、放せ!!」
葵は、いきなり後ろから肩を押さえられた。山崎は目の前にいるため、この部屋にいるのはあと1人しかいない。
「そうはいかねぇな…怪我してんだろ?おとなしく山崎に診てもらえ。」
葵は土方から離れようともがいていたが、男の力に女が敵う訳もなくあっさり山崎に左手を掴まれた。
「いっ…たぁ……」
葵は、手を引かれた時に感じた痛みに眉をひそめた。
「斬られたんか?副長…悪いけど、薬、出したってくれへん?」
「あぁ…けど、そいつの手当て終わったら、後始末頼んだ。」
山崎は頷いて出ていった。土方は押し入れの中を探っている。葵は仕方なしにその場に座り込んだ。
「あった、あった。ほれ、飲め。」
土方は押し入れの奥から取り出した紙袋を葵に渡した。その紙袋には、読みにくいが文字が書いてあった。
「“石田散薬”…。これって、土方副長が売り歩いたっていう…」
「そんなことまで知ってんのかよ…」
土方は、大きな溜め息を吐いた。
「よっと!!葵、戻ったで?」
その声と共に、山崎が天井から降ってきた。登場の仕方に驚きながら、葵は無意識に左手を山崎に見えないように後ろに回していた。
「葵……そんなに俺に診られんの、嫌なんか?」
「ぇ?あっ、ごめん…。」
葵は山崎に左手を差し出した。山崎は、その左手の傷に薬を塗り、包帯を手際よく巻いた。
「ほい、完成や!!ついでに水や。まだ飲んでないやろ?」
葵はコクンと頷き、水を受け取った。