新撰組~変えてやる!!
「え~…いいじゃありませんか~…それに、一君に頼んだのは私ですよ?」
沖田はぷくっと頬を膨らませた。
「兎に角、出て行け。邪魔だ。」
「は~い…」
斉藤の威圧感をものともしなかった沖田も、流石に殺気には部屋を出ていく気になったようだ。
「…すまん。そこに座れ。」
斉藤は沖田が出ていった襖を閉めながら言った。葵は腰にさしてある刀を鞘ごと抜いてから座った。
「刀を渡せ。」
葵は斉藤の差し出した手に刀をのせた。
「ほぅ…いい刀を貰ったな。」
斉藤は鞘から刀を抜き、部屋の隅にあった箱を手元に引き寄せた。
「よし、説明するぞ。これが目釘抜<メクギヌキ>だ。これが打粉<ウチコ>。拭い紙<ヌグイガミ>、丁子油<チョウジアブラ>。最後に油塗紙<アブラトシ>だ。」
「…一…、名前も覚えなきゃダメ?」
葵は不安げな声で斉藤に問いかけた。
「…徐々に覚えればいい。」
その斉藤の言葉に、葵はホッと胸を撫で下ろした。
「とりあえず、一番簡単な手入れの仕方を教えておく。まず、拭い<ヌグイ>だ。拭いには、下拭い<シタヌグイ>と上拭い<アゲヌグイ>がある。まずは、下拭いで古い油や汚れを取る。次に、打粉。ムラを作らないことが重要だ。それが終わったら、上拭いだ。これでも、汚れが取れなかったら、打粉をかけて上拭いを繰り返せばいい。最後に、油塗紙に油をつけて、塗る。油は少なくてもいけないが、多過ぎても駄目だ。均一に塗るのが一番のコツだ。」
斉藤は、葵が分かりやすいように全て実演した。
「…分からないことがあれば、また聞きに来い。」
斉藤は、そう言ってから葵の刀を鞘に納め、それを葵に手渡した。
「ありがとう、一。」
葵は斉藤に、軽く頭を下げた。
「いや……それよりも、着替えた方がいい。そのままの格好では嫌だろう?副長には終わり次第、連れてくるように耳打ちされたが、俺はそんなことする気はないからな。」
斉藤は、ふっと微笑んだ。
「葵といると、弟でも出来たように感じる。いつでも来い。俺に教えられることならば何でも教えてやる。いいな?」
葵は斉藤と同様に微笑み、その場を去った。