新撰組~変えてやる!!
「“局中法度により、切腹を希望する。”と…。確かに、お伝えしました。」
3人は目を見開いて固まってしまった。それも理解は出来る。新見と芹沢の横暴ぶりは一度見ただけだが、確かにひどいものだと思えた。けれど、根は悪い人たちではない。やりすぎるところはあるかもしれないが、それもすべて新撰組の事を考えてのこと。何よりも、新撰組がこうして存在しているのは芹沢のおかげと言っても過言ではないのではないか。そう考えると、殺すのはおかしいのではないかと、葵は俯きながら考えていた。
「…それは、本当か?」
今まで口を開かなかった土方が口を開いた。山南達も口には出していないが、同じことを問いたかったのだろう。少し前傾姿勢になっている。
「…局長命令に、逆らうことなど出来ませんから。」
葵は、ふんわりと土方達に微笑んだ。土方の眉間の皺がさらに深くなった。
「小宮…日時を言う。伝えろ。“9月13日の昼、芹沢 鴨、新見 錦の切腹を行う。介錯人の希望があれば、直接言いに来るように。なければ、沖田と斉藤にする。”と。」
「…承知、致しました。」
葵は3人に頭を下げて、部屋を出た。土方、近藤、山南の3人以外に、もう一人天井裏にいる存在に気付くことなく。
「山崎…降りてこい。……“芹沢一派暗殺計画”…それをあいつのおかげで立てなくてもよくなるなんてな…」
葵が出て行ったあとの部屋で土方は呟くように言った。
「歳…、小宮君のことが気になっているのか?」
「ちげぇよ…ただ、…」
山南は目の前に置かれた紙をたたむ。山崎も無言でそれを手伝いながら土方達の話に耳を傾けていた。
「ただ…、あいつは、総司に似てる…。何かを隠していて、それを隠すために笑ってる。そんな気がするんだ…。」
「葵は……死を極端に恐れとるんやと思う。今日かて、朝食に手ぇ、あんま付けてなかった。」
山崎は土方の顔を見ずに言った。
「小宮の事は兎も角、平間達の監視を頼む。」
「承知致しております。」
山崎は手に持っていた紙を山南に渡し、天井裏へと消えていった。