新撰組~変えてやる!!
「葵…?」
斉藤は芹沢を目に留めず、葵の方を見た。
「斉藤、暫し道場を貸してはくれんか?」
斉藤は芹沢の方を向き、頷いた。
「すまんな…。小宮!!新見!!来い!」
芹沢は斉藤にだけ聞こえるように呟いてから、葵と新見を大声で呼んだ。斉藤は、驚きながらも隊士達へ端に寄るように言った。
「一、ごめんね…稽古の邪魔して…」
「いや、問題ない。」
斉藤は、葵に自分の持っていた木刀を渡した。芹沢も新見も、隊士から木刀を借りていた。
「まずは、儂からだ。」
芹沢は道場の真中へと進み出た。葵も斉藤に背中を押され、前に出た。
「…それでは、芹沢局長と葵の勝負、…はじめ!!」
斉藤の低く、よく通る声が響いた。直後に動いたのは芹沢。葵は、芹沢の木刀を自分の木刀で受け止めた。
「…ほう…、なかなかやるではないか。どこの流派だ?」
芹沢は口の端を軽く持ち上げ、不敵な笑みで葵に問い掛けた。
「…小宮流の師範代をしてました。まだまだ小さな道場でしたので御存じではないでしょうが…。」
葵も芹沢の木刀を払い、間合をとってから微笑んだ。
「ふっ…やはりお前は、小姓ほどの器ではない。儂の目は節穴ではなかった。小宮!!全力で来い!!」
「はい!!」
葵は芹沢に不敵な笑みを見せてから、深く踏み込んだ。
「一本!!勝者、小宮 葵!」
隊士達は、斉藤の良く通る声にわぁっと湧き上がった。