新撰組~変えてやる!!
葵は、道場の端へと追いやられていた。
「…………」
遂に、葵の背が壁についた。それを見て新見は、勝ち誇ったように笑った。
「…っ!?」
その後は、一瞬だった。
「…俺の勝ちです。」
葵は、新見の後ろから木刀を突き付けていた。
葵は新見に追い詰められた状態でも焦らなかった。これが一か八かの勝負だった。葵の作戦は、“相手に勝ちを確信させ、素早く後ろに回り込む。”というものだった。ただし、端まで追い詰められていたため、脱出するためには上を飛ぶしかなかった。その為、葵は壁を蹴り、新見の上を飛び越えてから新見の後ろから木刀を突き付けていた。まさに、一か八かだった。
その時の光景を見た者たちは、後々葵の事を“天女様”と噂し、陰ではそう呼ばれていくようになっていくのだが、それはまた別のお話…。
葵はふぅっと大きな息をつき、その場に座り込んだ。
「…さすがに、2人続けて相手するのは疲れる…。ありがとうございました。」
「…チッ!!やっぱりかよ…」
新見も木刀を放り出して寝そべってしまった。
「…お前たち、今日の稽古は終わりだ。解散!!」
斉藤は隊士達に号令を掛けてから葵の側に近付いてきた。
「葵…昼飯の時間だ。一緒に行くか?」
斉藤は、葵の隣にある木刀を拾い上げながら言った。
「うん!!…芹沢局長もどうですか?」
葵は、立ち上がりながら聞いた。斉藤は新見や、芹沢の使った木刀を片付けている。芹沢は少し考えて、言った。
「…今日は良い。外で食べてくる。」
「そうですか…残念です。新見副長はどうします?」
残念そうな顔をしてから、新見に問い掛けた。
「…俺も外で食べる。じゃあな…!!」
新見はそう言って、道場を出て行ってしまった。それに続き芹沢も出て行き、葵と斉藤が残されてしまった。
「……一、行こ!」
「あぁ…」
葵は、斉藤が返事したのを確認してから道場から出た。