新撰組~変えてやる!!
葵は再びぼーっと太陽が沈み、暗くなった空に浮かぶ月を見ていた。庭を歩いていて、ふと見上げた先にちょうど月があったのだ。
「きれいな月…兄さん達にも、見せてあげたいなぁ…」
この時代の月や星は空気が澄んでいるためか、とてもきれいに見える。それだけでも、今いるこの場所が幕末の京都で、兄とはもう逢えないことを改めて実感させられる。葵は、それが嫌だった。
“ここが嫌いなわけじゃないし、その内慣れてくる、よね…?”
葵は心の中で、自分を励ました。
「葵…、此処にいたか。」
葵は、月を眺めるのをやめて、声がした方を向いた。
「…一…、何かあったの?」
葵は、斉藤の近くまで寄った。
「今日は、酒宴らしい。珍しいことに、副長の提案だそうだ。…何故か、知っているか?」
「…どうだろうね。」
葵は斉藤から目を逸らし、再び月を見上げた。
「……そうか。大広間に来い。」
斉藤は、それだけ言って歩いて行った。
「……武士って、何だろ…。」
葵は、小さく呟いた。土方の部屋に居る時に、“武士よりも武士らしく”という言葉を聞いた気がする。しっかりとは覚えていないのだが…。少し冷たい風が、葵の髪を揺らして通り過ぎていった。
葵は、斉藤に言われた通り大広間に向かっていた。中では、平隊士がざっと30人ほどいた。幹部の者達も、既に集まっている。
「葵、遅かったなぁ。何しとったん?」
「考え事。大したことじゃないから。」
葵は山崎の隣に、目立たないように座った。
「芹沢はん、自分から切腹したいて言うたらしいな。」
葵は小さく頷いた。