新撰組~変えてやる!!
「あの人は立派な人だよ。新見副長も、土方副長や近藤局長も、ね。」
「葵…」
山崎が何かを言おうとした丁度その時、ガヤガヤとしていた大広間が静まった。何事かと見やれば、芹沢と新見が近藤の近くに座っていた。唐突に、土方は立ち上がり大声で話し出した。
「重大な発表をする。よく聞け!」
土方は、そこまで言って言いにくそうに口を閉ざした。その土方の隣で、1つの影が動いた。
「9月13日、儂と新見は“局中法度”により、切腹する。“局中法度”については土方が説明するだろう。」
芹沢は鉄扇をパチンと閉じながら座った。下手ながらも、芹沢の気遣いだった。
「…“局中法度”…
“一、士道ニ背キ間敷事。
一、局ヲ脱スルヲ許サズ。
一、勝手ニ金策致スベカラズ。
一、勝手ニ訴訟取リ扱フベカラズ。
右条々相背ムク候者ハ切腹申付ベク候也。”
新しく作った規則だ。今言った通り、守らなかった者は切腹だ。」
土方の言葉に、隊士達がざわつき出す。だがそれも、芹沢の一喝によって静まった。
「…ま、まぁ…皆、今日は酒宴だ。飲め。よろしいですね、芹沢さん。」
「好きにしろ。これからはお主等が動かしていく組だ。」
芹沢の声に戸惑いつつも、隊士達は酒を飲み始めた。近藤と土方は芹沢と新見に酒を注いでいる。葵は無言で立ち上がり、隊士達を避けながら芹沢達の元へ向かった。
「……儂は…小宮に、介錯を頼もうと思う。」
「俺は、永倉に…」
はじめに聞こえたのはその声。葵は2人のその言葉を聞いた時、心臓が止まってしまうのではないかと思うほどに驚いた。だが、すぐに壊れそうなほどに脈打ち始める。
“…芹沢局長の…介錯…どう、して?…誰か…教えてよ…”
葵は、その場から動けなかった。その間にも土方達の許可を出す声や、芹沢のどこか諦めたような声が聞こえてくる。葵は、それ以上聞くのが辛くなって大広間から逃げ出すように縁側へ出た。
「どうした?体調でも悪いのか?」
縁側で月を眺めていた葵に掛けられた声は、今、一番会いたくない人の声だった。葵は答えず、そのまま月を眺めていた。それを不思議に思ったのかその人は葵の横に腰掛けた。