新撰組~変えてやる!!
「ぱっつぁん……武士って何?俺には、よく分かんないよ…。」
「何だ?いきなり…やっぱり体調、悪いのか?」
縁側に座り、月を見ていた永倉は酒を飲みながら葵に視線を向けた。
「……生きたいって思わないのかな?」
「……葵…俺な、思うんだ。武士なんてつまんねぇもんだって。俺は、武士になりてぇなんて思ったこともない。それに、誰だって生きたいと思うだろ。それを口に出すか出さねぇかの違いなんじゃねぇか」
永倉は、どこか遠くを見つめながら呟くように言った。
「…やっぱり、よく分かんないや。」
「…今分かんなくてもいいさ。その内、分かるようになるだろ。」
永倉は葵の頭に、手をポンと置いた。その仕草は、葵の兄の榊がよくするものに似ていた。
「おっと!!いっけねぇ…完璧に忘れてたぜ…葵、近藤さん達が呼んでる。」
葵はうつむき、首を横に振った。“行きたくない…”と。
「局長命令なんだぞ!?」
「…嫌。行きたくない。」
永倉は暫くの間葵を見つめていたが、待っていても無駄だと思ったのか、葵の腕を掴み、力ずくで立ち上がらせた。
「痛い!!ちょっと!?」
「いいから、来い!」
葵は必死に抵抗したが、男の力に敵う訳がなく呆気なく近藤達の元へと連れて行かれてしまった。
「近藤さん、連れてきた。俺はもういいのか?」
「いや。新八にも関係があるんだ。まぁ、座れ。」
近藤は、そのまま立ち去ろうとした永倉を呼びとめた。近藤の言葉に、永倉は不思議そうに葵の隣に座った。
「歳…頼んだ…。」
「あぁ…実は、介錯に関する事なんだ。嫌なら、断ってもいい。」
葵は、芹沢に視線を移した。
「芹沢さんの介錯は小宮、新見さんの介錯はぱっつぁんに頼みたい。出来るか?無理ならいいが…」
「拒否する理由などありません。芹沢局長、自らのご指名です。俺のような者でよろしいのなら、喜んで。」
葵は、フワッと芹沢から視線を外さずに微笑んだ。永倉も葵の隣で、“もちろんです。”と土方に言った。