新撰組~変えてやる!!
「すまんな…小宮、明日の朝、儂の部屋に来い。渡したい物がある。」
「承知致しました。」
葵は軽く頭を下げ、その場を後にするため立ち上がった。そして、再び縁側へと歩いていった。空には、こぼれ落ちそうなほど多くの星々。月に負けないほどの輝きを放っている。それを見上げながら、葵は再び縁側に座った。ひんやりと湿った風が葵の頬に触れて通り過ぎる。
「明後日……覚悟を決めなきゃ…」
葵は、丸みを帯びた月を見ながら呟いたのだった。
ー翌朝。薄く曇った空に眉をひそめながら、葵は芹沢の部屋へと向かった。
「芹沢局長、起きてますか?」
「あぁ…入れ、小宮…」
葵は、早すぎる時間のため、起きていないと思っていた芹沢が、既に起きていたことに驚きつつ静かに部屋に入った。
「早かったな。まぁ、いいがな…」
「す、すいません…」
葵は、襖を閉めながら答えた。芹沢の前に座り無言で差し出された風呂敷を見る。
「これは…?」
「儂が、死んでから開けるといい。くれぐれも、死ぬ前に開けるな。よいか?」
葵は小さく頷いた。なぜだか、声を出してはいけないような気がしたのだ。葵が頷いたのを見て、芹沢が小さく微笑んだ。
「…お前や、梅を残して逝くのが心残りになりそうだ。……今日は、梅と2人で過ごしたい。用事があるなら夜にしてくれ、と新見逹に伝えてくれ。もちろん、土方逹にもだ。」
「分かりました。伝えておきます。」
葵が風呂敷を持ち、立ち上がったと同時に、部屋の襖が勢い良く開いた。
「芹沢はん、どういうことなん!?あっ…葵…」
「お梅さ…ん……」
葵は、芹沢に軽く礼をし、その場を立ち去った。遠くから、梅の怒声、続いて泣き声が聞こえてくる。葵はその声を聞いて、胸を鷲掴みにされたような感覚に陥った。葵は、足早に広間へと足を運んだ。