新撰組~変えてやる!!
芹沢は豪快に笑い、新見は人一人が座れるくらいのスペースを開ける。
「小宮、座れ。」
「…はい。」
葵は渋々その小さなスペースに座った。
「小宮…何故、儂らが、切腹したいと言ったか分かるか?」
葵は首を横に振った。新見は、芹沢が話しているにもかかわらず、酒を飲み進めていく。
「…“光”があれば“闇”がある。この新撰組において、“闇”は“儂ら”だ。ならば“光”は誰だと思う?」
「……近藤局長達、ですか?」
芹沢は頷いた。そして、酒を飲む。
「…そうだ。近藤と山南は“光”であろうな。土方は、“闇になりきれない光”だな。均等の取れた組ではない。必ずや、どこかでほころびが出て来るだろう…。その時は小
宮、儂の変わりに“闇”になれ。」
葵は頷けなかった。なおも芹沢は話し続ける。
「この新撰組、お前に任せる。頼んだぞ。」
その後に、芹沢は小さく“女は闇の生き物と聞いたことがある。”とつぶやいた。だが、その呟きは新見の声にかき消され、葵に聞こえることは無かった。
「…ぅ…やべ…吐く…」
「に、新見副長!?ま、待っていてください!!今、水持ってきますから!!」
葵は、慌てて芹沢の部屋から飛び出していった。
「新見…」
「…何です?」
葵が出ていったあと、芹沢と新見は縁側へと出ていた。
「あいつに、勤まると思うか?」
「もちろん。それくらいの器量、あいつにはありますよ。なんたって、俺が惚れた奴ですからね。」
芹沢は静かに目を伏せた。新見は柱に寄りかかって曇っている空を見上げた。
「に、新見副長!!水です!!」
「あぁ…」
新見は水を受け取り、それを飲み干した。
「ありがとな。…もう寝ろ。」
芹沢も頷いた。
「…では、失礼します。ゆっくりお休みになってくださいね。」
葵は2人に微笑んでその場を後にした。その場に残された新見と芹沢の表情は、“壬生狼”と呼ばれたころのそれに変わっていた。