新撰組~変えてやる!!
•1 切腹
葵は肌寒さを感じ、起きた。外はまだ暗い。ザーっという音が聞こえる。葵は隣で眠る山崎を起こさないように気を払いながら寝巻きから着流しに着替えた。
「…雨だ…」
葵は鼠色の空を呆然と眺めていた。
「ぅ~…寒いやろ…葵、閉めてくれ~…こんな日に雨かいな…最悪や…」
「ぁ、ごめん…まだ休んでていい時間だと思うから、寝てなよ。」
山崎は寒そうにしながら、頭まで布団を被ってしまった。
「…言われんでもそうするわ。」
葵は、布団の中から聞こえるくぐもり声に苦笑しながら、小さく“お休み”と声を掛けてから襖を閉めた。
「さてと…」
葵は小さく独り言を呟いてから、足のむくまま、気のむくままにある場所へ赴いていた。
「…こんな朝から誰もいない、よね…?それに、ただ木刀借りるだけだし、ね。」
葵が向かったのは道場だった。雨の日は必ずと言っていいほど、起きるのが早くなる。そんな時はいつも木刀を振って過ごしていた。
「ぇ…?」
だから余計に驚いた。“こんな時間に人が居るのか。”と。よくよく見ればそれは土方だった。しかし、葵には兄の叶が木刀を振っているかのように見えた。土方の木刀を振る姿は、まるで水の流れのように滑らかに見えた。
「誰だ!?」
土方は気配を感じたのか、振り返った。土方の目線の先には、呆然と立ち尽くす葵の姿があった。
「…小宮か。そんな着流し姿で何をしに来たんだ?」
「……いえ、木刀でも借りようかと思って…副長こそ、どうされました?こんな早朝から…」
葵は木刀を取るために道場内に入った。
「あぁ…今日は何だか落ち着かねぇんだよ。んで、気ぃ紛らわすためにここで素振りしてただけだ。」
「そうですか。まぁ、いいんじゃありませんか?俺もよくしますから。」
葵はそう言って、手に持った木刀を勢い良く振った。ブンッと音が響いた。
やがてざわざわと騒がしくなったため、葵と土方は共に広間へと向かった。