新撰組~変えてやる!!

 いつも以上に慌ただしい朝だった。何時の間にか朝でなくなり、昼になっている。芹沢と新見が白い死に装束をその身に纏い目の前で正座している。浅黄色の裃が自分の持つ隊服と重なる。

 「…小宮…失敗してもいい。初めてだろう?落ち着いてやれ。」

 芹沢の儚く笑う顔が、父に重なる。新見の心配そうな眼差しが母に重なる。

 「…はい。努力します。」

 少々のコツや作法のことは、沖田や斉藤や山崎などに聞いていた。葵の手が、カタカタと震える。落ち着かせるように、大きく息を吐き出した。






 芹沢と新見がほぼ同時に腹に小刀を突き刺す。肉を突き刺した音が、鈍く小さな部屋に響く。

 「……楽しかったぞ、小宮…」

 葵が刀を振り下ろした時に聞こえた小さく、だがしっかりとした声。その直後にはその声の主ー芹沢は絶命していた。もちろん、葵の振り下ろした刀によってだ。芹沢の言葉の真相を知る者はすでにいなかったのだった。首の皮一枚を残し、芹沢と新見の体は切り離された。







 文久3年 9月13日
  芹沢 鴨、新見 錦、切腹ニ依リテ死ス。
 御霊ノ安ラカナル眠リヲ…。







 歴史の歯車がカタンと音を立てた。



 
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