新撰組~変えてやる!!
•2 手紙
葵は山崎の腕を肩に回し立ち上がった。ずるずると引きずるたびに山崎の体が滑り、余計な力がかかる。
「…ぉ、重…」
思わず口にしてしまったがそれで山崎が起きるわけでもなく、葵は引きずりながらも、土方の部屋の中まで運び込んだ。
「…っ…こんな熱出して、倒れるなって言う方が無理だよ…」
葵は山崎の額に手を置き、呟いた。山崎は苦しそうに眉を寄せている。
「小宮!!持ってきたぞ!手伝え!!」
葵は勢い良く入ってきた土方に視線だけ移し、不服そうな顔をした。
「………土方副長、完璧に忘れてませんか?“女”ってこと…」
「…ぁ………ま、まぁ…ここは俺に任せて、おめぇは着替えてきな!!今、俺の部屋の隣が空いてっから、山崎はそこに置く。何か持ってくるもんあんだったら持ってきな。山崎の看病はおめぇに任すからよ。」
土方はあからさまに慌てながら葵を部屋から追い出した。誰にも会うことなく、自室まで帰ってきた葵はひとり愚痴を言いながら着替えていた。
「…ったく、本っ当に失礼な奴だ…女だって分かってて入れたのはそっちじゃねぇかよ…。第一、新見副長だって…」
そこまで言って、葵は口をつぐんだ。そして黙り込んだまま、芹沢から託された包みを持って、土方の部屋へ向かった。
「土方副長、小宮です。」
「こっちだ、小宮。」
葵は声のした土方の部屋の右隣の部屋に足を踏み入れた。中にはちゃんと服を着替えた山崎が布団の中にいた。
「…そう言えば副長、隊長達にどうのこうのって…よかったんですか?」
山崎は沖田達隊長に葵が見つかったと知らせるために行くはずが、その場で倒れてしまったのだから、もちろんその知らせは、沖田達には届いてないはずだ。
「ん?あぁ…見つからなかったら、一回門限までに帰ってくるように言ってあるからな、まぁ、大丈夫だろ。あと少しで帰ってくるぞ。」
「そうですか。安心しました。」
そう言って、葵は持ってきた包みを膝の上に乗せ、結び目をほどいた。