意識の融解
では、自分はどうなのだろう?


私の運転するクルマはお気に入りの星空の下にたどり着いた。

クルマを降りて岸壁の縁に適当に寝転がり、夜の闇に溶けて心地よさを味わう。

そして意識だけになった自分に問う。


私は、夢を持っているか?

理想や、希望の実現のために突き進んでいるだろうか?

深く考えることなく答えは『否』だ。

今やすっかり現状維持に落ち着き、世間の流れに身を委ねているのが自分だ。


それでも入社してからの数年間は違っていた。

進んで意見し、仕事を引き受け、スキルアップのために努力もした。

それが、異動先の部署で疲れてしまったのだ。

私は、異動先で前任者がやっていたとおりの仕事を求められた。異動元にとっては、おそらく私は主張が強すぎたのだ。

慣習を壊さぬことが優先され私の意見は受け入れられず、暇を持て余している部署で引き受ける仕事は特になく、視野を広げようと始めたリサーチは必要ないと念を押された。

一年後、私はすっかり幻滅し、戦うことにも疲れ、蓄積したストレスから体調を壊した。

療養休暇が明けてからの私は、すっかり人が変わったように、戦うことをやめた。

それでも人並みに器用な私はその後所属したどの部署の仕事も、無難にもしくはそれ以上にこなすことができ、大した意欲がなくとも標準的な評価を得ていた。


しかし、満足感を感じることは全くなかった。



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