結婚指輪をぶっ壊せ!


「こんにちはー」

とけだるそうに言いながら上田先生が教室に入ってきた。

内心ビクビクしている。

ビクビクというよりドキドキなんだろうけど、私にはよく分からない。

「せんせぇー、席替えしよぉー」

と私がクラスの男子の中で一番話易い岩滝琢也(イワタキタクヤ)君がそう言い出した。

私の数学Aの時の席は二行目の一番前。

先生のすぐ近くにいれるから案外好きな席で、正直にいうと席替えなんかしたくなかった。

美和は私のすぐ横の三行目の一番前。

美和も苦虫を噛み潰したようなしかめっつらをしている。

私は美和の方へ体を反らせ、

「いやだー」

と声を出さずにうったえた。

美和も気づいたらしく

「私も」

という意味で頭を上下に振っている。

「んじゃあ、岩滝ぃ。明日のSHRの後、すぐに俺んトコ来い。したら席替えでも何でもしてやるよ」

と先生はいきなり言い出した。

琢也君はにこっと笑って

「行ってやるし!上田先生待ってろよ!!」

と言った。


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