遥かなる愛の花束を。
「えっ?帰ってる・・・?」
私は向かいに座る美郷(みさと)を思わず凝視してしまった。
美郷は気まずそうに、
「うん」
と小さな声で頷いた。
不安が漂う美郷の顔が
テーブルのグラスに映る。
テーブルの上に置かれた美里の手は
まるで何かを訴えるように
力強くぎゅっとにぎられていた。
私は
それまでせわしなく
ストローでグラスの中の氷をつついていた手を止め
向かいの美郷を見つめて言った。
「本当なの?」
―出来れば、冗談だと言ってほしい―
そうであることを願う。
美郷し、
私がこのことに敏感であることを美郷は誰よりも知っている。
そんな美郷がこんなタチの悪い“冗談”を言うはずがない。
そんなことは百も承知だ。
だけど、
それが冗談であってほしい、と願わずにはいられなかった。
私は一縷の望みを胸に抱いたまま、
ただじっと美郷を見据え、その言葉を待った。