トレイン


「何も変わってないな」

強羅駅を降りて改札を出た。時が止まったかのように駅前の風景は前にきた時と同じだった。観光に訪れた外国人の団体、裕福そうな老夫婦、やたらスカートの長い地元の学生、僕たちと同じような若いカップルも数組いる。

去年はここからさらにケーブルカーに乗って、公園上駅の旅館に一泊したが、今回は駅の目の前にある聞けば誰でも分かるよな有名な旅館を二泊予約していた。リカと丸2日間一緒にいるのは久しぶりだ。

時間もちょうど良かったので、僕たちはそのまま旅館に向かい受付を済まして部屋に入った。
少し奮発してお金を出し合い、高めの旅館にしたおかげで、部屋は広さも間取りも申し分無かった。外のテラスには、檜の客室露天風呂までついている。
僕は今にも眠ってしまいそうなリカの顔を見ていった。

「二泊できるし、今日はゆっくりしようか」

「うん。そうする」

それから僕たちは一時間ほど旅館の周りにあるお土産屋をぶらぶらと見て周り、すぐに部屋へ戻って浴衣に着替えた。旅館で借りたピンクの花柄の浴衣は、リカに良く似合っていた。

「写真撮ってあげるよ」

僕はデジカメを取ってリカに向けた。
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