君に、
俺は、吸い寄せられるように、彼女に近づく。
白い小さな手が林檎に伸びて。
その前に俺が、彼女より一回り大きい手で、林檎をつかんだ。
下を向いていた彼女は、体をビクリとさせて。
俺を見る。
その、綺麗な顔立ちに。
俺は、ドキリとした。
小さな白い顔に、ぱっちり二重の、少し垂れた目。
小さな唇。
俺は背筋を伸ばした。
彼女も同じように、俺の前に立つ。
身長は、俺の肩ほどもなかった。
「・・・どうぞ」
俺は、彼女に林檎を差し出した。
彼女は少し、驚いた顔をして。
にっこりと笑う。
垂れた目が余計にグッと下がった。
「ありがとう」
彼女は俺から林檎を受け取る。
受け取る時、ほんの少し、彼女の指が俺の指に触れて。
俺は心臓がバクバクと唸っているのに気がついた。
「あの、え、手伝います」
反射的に、俺はそう呟くと、転がっている果物を集めはじめる。