君に、
「・・・本当にありがとうね。助かった!!」
転がっていた果物をすべて紙袋に入れ終って。
彼女は微笑みながら言った。
俺はぶんぶんと、首を横に振る。
「いえ、このくらい、全然」
それから、照れ臭くなって。
右手で頭をかく。
それを見てまた、笑った彼女は、ハッとした表情をした。
「えと・・・学生さん、よね??
もしかして、電車乗り過ごしたんじゃ・・・」
「あ」
俺は急いで、後ろにある線路を振り返った。
そこに電車はなくて。
ついでに、さっきまであんなにたくさんの人がいたのに、今ではほとんどいない。
ホームに取り付けられた、時計を見る。
7時22分。
やばい。
絶対、乗り遅れた。
「あ・・・あー・・・いや、大丈夫です!!!」
やばいですね。
そう言いかけて、やめた。
彼女の瞳が不安そうに俺を見ていたから。
例えるなら、チワワの瞳、犬嫌いな人は小動物、動物嫌いな人は・・・とりあえず、それほどに潤んでいる気がしたから。