君に、










「・・・本当にありがとうね。助かった!!」


転がっていた果物をすべて紙袋に入れ終って。
彼女は微笑みながら言った。

俺はぶんぶんと、首を横に振る。



「いえ、このくらい、全然」



それから、照れ臭くなって。

右手で頭をかく。

それを見てまた、笑った彼女は、ハッとした表情をした。



「えと・・・学生さん、よね??
もしかして、電車乗り過ごしたんじゃ・・・」

「あ」



俺は急いで、後ろにある線路を振り返った。

そこに電車はなくて。
ついでに、さっきまであんなにたくさんの人がいたのに、今ではほとんどいない。

ホームに取り付けられた、時計を見る。

7時22分。

やばい。
絶対、乗り遅れた。




「あ・・・あー・・・いや、大丈夫です!!!」





やばいですね。

そう言いかけて、やめた。
彼女の瞳が不安そうに俺を見ていたから。

例えるなら、チワワの瞳、犬嫌いな人は小動物、動物嫌いな人は・・・とりあえず、それほどに潤んでいる気がしたから。




< 3 / 11 >

この作品をシェア

pagetop