君に、
俺は、我に帰る。
後ろを見た。
この電車に乗れば、遅刻度を少しでも和らげられる。
「あ、それじゃぁ!!」
そう言い残すと、俺は急いで電車に乗る。
「あ、ありがとうね!!」
後ろから、そう、声がした。
電車に乗って。
一呼吸ついて。
俺は透明な窓から、彼女の姿を探した。
でも、さっきまでいたはずの彼女の姿は見つからなくて。
神隠しにでもあった気分で、呆然とする。
あんなにも綺麗だったんだ。
もしかしたら、俺が勝手に作り出した空想とか??
そんなに欲求不満じゃないはずなんだけど。
電車が発車する。
反動で体が揺れた。
ゆっくりとイスに座りながら。
俺はさっきまで目の前に立っていた彼女に、想いをはせていた。