君に、
「だってナツ、タラシじゃん」
俺は、亜姫を見た。
紺色で、襟だけ白い制服から、細い首が出ていて。
彫刻のような綺麗な横顔。
この間の人とは、違うタイプの美女だ。
亜姫に憧れを持っている男子を、俺は星の数ほど知っている。
あ、もちろん、俺は入ってない。
亜姫は綺麗だと素直に思うけど。
亜姫とは、距離が近すぎて。
手を出す気にもなれない。
「・・・そーゆーお前は、どうなわけ??」
まぁ。
こいつには最愛の彼氏がいるから。
ムダなわけだけど。
肩から、彼女の柔らかい髪が落ちた。
「は??」
「だから!!年上の彼氏とだよ」
亜姫の顔が、赤くなった。
いつも意地っ張りで、可愛げのない彼女が、唯一可愛く見える瞬間だ。
よっぽど、彼氏のことが好きなんだろう。
恋する乙女って、こーゆーのを言うんだろーなぁ。
「ど、どうって・・・」
「かなり、年上なんだろ??もう、ヤっちゃった??」
すごい勢いで、亜姫がこちらを見た。
さっきとは違う意味で、顔を真っ赤にさせている。
・・・林檎みてえ。
ふと、林檎を差し出してきた、彼女の細い指を思い出す。
アーモンド形の、綺麗な爪も。