君との世界。[短編38P][企画]
メールで呼び出されて大学院に来たんだけど……。
「おい、あの子どうにかしろよ」
質素な扉を開けた途端、聞こえてきた不機嫌そうな声。
研究室で書類に囲まれた坂本深(さかもと しん)が、部屋を訪れた俺を振り返るなりそう言った。
「あの子?」
何を言われているのか分からなかった。
「小椋みうだよ。流の幼馴染だろ?」
「は? ミュー!?」
何で深からミューの名前が出てくるんだろうか?
高校の同級生とは言っても、学校から遠い俺んちの方に、深が来たことはない。
会話に出したことはあるが、ミューは高校も大学も違うから、深との接点なんてほぼないはずなのに。