雪峠
「俺は先に行くが、お前はゆっくり俺達を追い掛けて来い」
いいな?と問い掛ける土方に、思わず零れそうになる涙を堪えながら、はいと小さく頷き返す。
「達者でな」
土方はそれだけ言うと、ゆっくりと暗闇の方へ消えて行った。
その背中を見送りながら、
「近藤さんはもう、亡くなってしまったんですね…土方さん」
と、見えなくなった後ろ姿へと問いかけた。
そして、音も無く、雫が頬を伝い落ちる。
その晩…静寂が渦巻く中に、沖田の漏らす鳴咽だけが小さく響いていた。