【短編】吾が輩は、
今は?



変わったの?



見つめ合うこと数秒。



恭也はフイッと膝の上から降りた。



「別に。」



声が拗ねている。



…可愛い。 



どうやら怒っていたわけではなく、困っていたらしい。



そうわかれば、怖くはない。



嶌子は恭也の隣に寝そべった。



「ねぇ、恭也?」



尻尾が振れた。



それを指先で追いながら、嶌子は言った。



「猫になるって、どんな気分?」


「別に。
聴覚とか視力とか変わるのかと思ったけど変わらないし。
視点と身体の使い勝手が変わったくらい。」


「動きにくい?」



肉球を爪で掻くと、恭也はビクッと足を引っ込めた。



「いや。
不思議な感覚なだけ。」


「そっかぁ。」



言いながら、嶌子はふわふわの腹を触る。



いつもソラにしていたことだ。



恭也はくすぐったそうに身をよじった。



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