【短編】吾が輩は、
「いい加減に降参しなよ。」



答えず、恭也は悔しげに口元を歪める。



猫がそういう顔をするとむしろ怖い。



「ね、あたしの第一印象ってどんなだった?」



ふと、嶌子は尋ねた。



恭也は変な姿勢のままピタリと動きを止めた。



「うーん。
変な奴だと思った。」



今度は嶌子が固まった。



変な奴ってどういうことよ…。



恭也も嶌子の様子に気付いたらしい。



恭也はくたりと身体を楽な体制に持っていき、口を開いた。



「俺、話しかけやすいタイプではなかっただろ?
女の目もそれなりに集めてたのも知ってるし。」



そうなのだ。



自分で言われると何か腹立つものがあるが、真実だ。



無愛想なくせに、何故かそれが一部の女子の間ではかっこいいと評判になり。



中学に入ってからは思春期真っ只中だというのも手伝ってか、あからさまにアタックしてくる子もいたらしい。



「なのに、この俺に物怖じせず邪魔呼ばわりしやがった。」



聞いて、あぁあの時かとすぐにわかった。



< 12 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop