【短編】吾が輩は、
何がショックなのか、手足をピンと伸ばしたまま硬直している。



「俺、人間なのに、足使った…。」


「あ~。」



そこか、と嶌子は頭を掻く。



嶌子としては、中身は人間でも見かけは猫に変わりないので、自然に受け入れていた。



が、本人としては何か複雑なものがあるらしい。



はぁー、と深いため息をついている。



「恭也、仕方ないよ。
身体が猫なんだから自然なことだよ。」



「嫌だろ。
俺は、断じて猫ではない。」



そんなことを言われても。



現実あんたは猫だ!



そう思うのは嶌子だけだ。



いつも生意気を言うくせに、今回は黙りこんでしまった。



「まぁまぁ、いつか戻れるからそれまで我慢してよ。」






……何気なく言ったその嶌子の一言が、ひっそりと恭也を傷つけていた。



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